■ウエストランドのUberEats
河本「最近、ウーバーイーツを始めようと思って……」
井口「始める!? 注文するとかじゃなくて配達の仕事を始めるってこと?」
河本「そう」
井口「やめとけって、碌なもんじゃない。あんなもんは社会不適合者がやる仕事……、あっ、そうか、社会不適合者だからやるのか?」
河本「はい?」
井口「そうだ、お前は社会不適合者だからウーバーイーツを始めるんだな!」
河本「そういうイメージがあるかもしれないけど、僕はもちろん、他の配達員も社会不適合者ではないですよ」
井口「いいや、ウーバーイーツの配達員なんてやってる奴らは、全員もれなく社会不適合者だ! この前だってデリバリー用のでっかいバッグ背負った男が自転車で首都高に進入してニュースになってたじゃねぇか」
河本「あれは一部の配達員がしでかしたことだから……」
井口「違う! 他にも配達先で一目ぼれした女性のところにラブレター置いていったり、腹立つ客の玄関先にカレーぶちまけたりしてるだろ。そんで警察に捕まって……、あっ、わかった! 正解は、警察に捕まり始めている!!」
河本「……正解?」
井口「そう。正解は警察に捕まり始めている! これで間違いない!」
河本「正解も何も、クイズなんて出してないですよ」
井口「クイズやってない? あるなしクイズやってただろ」
河本「あるなしクイズ、やってないですよ」
井口「ウーバーイーツ配達員にあって、マックデリバリーにないもの。それは警察に捕まり始めているかいないか!」
河本「やってないですって、そんなクイズ」
井口「やってないか。そういえばウーバーイーツ配達員が社会不適合者だっていう話だったな」
河本「それもちょっと違うけど……」
井口「交通ルールも守らないし、配達バッグはボロボロで汚ねぇし、大人のくせしてすぐに道に迷うし、ありえない奴らだよホントに!」
河本「そんな酷いですかね?」
井口「そらそうだろ! この間牛丼屋に飯食いに行った時なんか、店員さんと配達員が満席の店内で大バトルしてたから」
河本「どんなバトル?」
井口「牛丼屋の店員が商品の内容合っているか確認してくれって言ってんのに、配達員が内容確認はそちらですることだから断るっとか言って喧嘩してんの。ホントしょうもない。何をそんなことで争ってんだよ!」
河本「何だろうね。めんどくさかったんじゃない」
井口「内容確認なんてすぐだろ! そうやって一々喧嘩してる方がよっぽど面倒だよ! 牛丼とサラダと豚汁ですね。この一言で終わりじゃねぇか!」
河本「けど、もしも牛丼と間違えて豚丼が入ってても配達員には判断しづらいから、やっぱり店員さんがやった方が良いよね」
井口「でたー、正論。正論やだー!」
河本「正論ならいいでしょ」
井口「いいよ、正論! ただ正論を言う奴は嫌われるよ。何故なら人間は、正しいことに背を向けてしまう愚かな生き物だから!!」
河本「急にそんな大げさな話になっちゃうの?」
井口「そんな愚かな生き物の中でも、ウーバーイーツ配達員はその最たるところだ!」
河本「そして話が戻った」
井口「昨日も阿佐ヶ谷の駅前で、馬鹿みたいにでっかいタイヤの自転車に乗った配達員がいてよぉ。いかつい自転車乗りやがって、何だあの太いタイヤ? どこの荒地に届けることを想定してあんな自転車で配達してんだよ! 阿佐ヶ谷と高円寺の間に砂漠地帯なんかねぇだろ! ただイキりたいだけじゃねぇか、くそ幅とるだけで邪魔くさい! あんな無用の長物買う奴は勿論、輸入している代理店も社会不適合者だわ!」
河本「それは単純に言い過ぎだから」
井口「言い過ぎじゃないって! あんなもんで堂々と歩道走りやがって、言っとくけど自転車でイキり倒すって中学生の発想だからな!!」
河本「そうかもしれないけど、クロスバイクとかでやってる爽やか系配達員もいるし」
井口「うわぁぁぁぁぁ!」
河本「……何?」
井口「ウーバーイーツが日本に上陸した当初は、清潔感のあるイケメンのお兄さんがお洒落自転車で料理を届けてくれるスタイリッシュなお仕事ってイメージあったけど、実際にそんなことは1mmもなかっただろ!」
河本「割合はわからないけど、そういう人も存在するでしょ」
井口「うわぁぁぁぁぁ、存在しません! イケメンの配達員なんてこの世に存在しません。いるのは職にあぶれたマイルドヤンキーによる原付配達員か、実家が貧乏で寄生すらできない限界ニートによるママチャリ配達員の二択だけだから!!」
河本「めちゃくちゃ偏見じゃないですか」
井口「いいか、イケメンは生まれた時からとんでもないアドバンテージ持ってるんだ。ウーバーイーツみたいなド底辺の仕事なんてやる理由がどこにもないんだよ!」
河本「イケメンが嫌いなのは知ってるけど、その発言は流石に怒られるよ」
井口「怒られないよ、事実を言ってるだけだから! 大体俺が注文した時、イケメンの配達員なんて一度も来たことねぇよ!」
河本「自分の経験で言ってるの? イケメン配達員が来たことも一度くらいはあるでしょ?」
井口「ない! 500回近く注文してるけど、一度もない!」
河本「すごいヘビーユーザー。けど500回注文して一度もないことはないんじゃない」
井口「ない!! 一度もない!! 仮にイケメン配達員が来たとしたら、バッド評価しまくってやるから!」
河本「何も悪いことしてなくても?」
井口「そういうもんなの! バッド評価であることないこと通報しまくってアカウント停止に追い込むから、結局イケメン配達員はゼロになるのよ。だから俺がいる限り、イケメン配達員なんてものはこの世に存在しないの!!」
河本「いや、あなたが社会不適合者じゃないですか!」