■村上春樹のウーバーイーツ
2021年03月29日
「またかい?」
Siriに言われ、僕は深くため息をつく。「まただよ」
住所が記されているはずのところには、案の定〒マークしか書かれていない。
「それでも君は走らなくちゃいけないのさ」
「一体どこまで走ればいい?」
「どこへでも。市役所だって、大使館だって、好きなところに行けばいい。その大量のピッツァを、武藤友木子の自宅に送り付けたって構わないんだ」
苦々しく笑みを浮かべた僕は、颯爽と空色のロードバイクにまたがった。
「悪くないね」