■ソフィ=シュイムの不条理なUberEats
2025年06月13日
鬱蒼と茂る木々の隙間に見え隠れする青空が、徐々に薄く白み始めてきている。
鬱蒼と茂る木々の隙間に見え隠れする青空が、徐々に薄く白み始めてきている。
ずんだ「ぼくの名前はずんだもん。フーデリ配達員として働いている賢くて優秀なずんだの妖精なのだ!」
開け放たれた窓から初夏の生温い風が入り込み、星柄の遮光カーテンがふわりと波打つ。
井口「始める!? 注文するとかじゃなくて配達の仕事を始めるってこと?」
日中の暑さがようやく落ち着いてきた8月の夜8時半。築30年は経っているだろうボロアパートの2階通路で深く頭を下げる少女は、恐る恐る顔を上げ、目の前にいる住人の顔色を伺った。そこにいるのは、ぱさぱさの金髪で眉毛がほぼない203号室の女性住人。女は毛のない眉を八の字にして、少女から受け取った袋を目の高さに持ち上げた。その袋の中に入っているのは、けんちんうどん。ただ肝心のけんちん汁が3割程度漏れており、ビニール袋に茶色い水溜まりをつくってしまっている。容器の蓋がしっかり閉まっていなかったようだ。